帰国してから早1週間。夜になるとついつい夜空を見上げてしまうのは決してオーロラを探している訳ではない。
それはさておき、今日ポジフィルムで撮った写真が現像から上がってきた。
出来栄えは、ご覧の通りあまり満足できる物ではなくガッカリ。
(やっぱりポジは難しい)
旅行最終日のこの日、滞在していた北極圏最大の町トロムソは朝から激しい雪に見舞われていた。街中で遭遇したトロムソに数日前から滞在しているという日本人の話によると、ずっとこんな天気で一度もオーロラを見ていないという。我てらは2日目にキールナでオーロラを見れただけでも幸運と思うしかないのか・・・
しかし、こんな天気にもかかわらず往生際が悪い・・・ではなく、勇敢な我ては前日に現地旅行会社主催のオーロラウォッチングツアーに申し込んでいたのだ。1人750クローネ(約15,000円)のそのツアーは車を1台チャーターし、トロムソから30分程走った所にあるラムフィヨルドまでオーロラを見に行くという内容の物だった。
もちろん、申し込んだ時は誰もこの天候でオーロラが見られるとも思わないので我てら2人だけしかおらず大きなバクチであったのだが、なぜそこまでしてツアーに申し込んだのかというと、トロムソの街は高い建物が多く、街の明りも明るいので、街中でのオーロラ撮影は略不可能に思えたからである。(オーロラが出る方向にもよるが橋を渡ってトロムソ街の対岸へ行けば撮れるかもしれないが、そこまでタクシーで行っても帰りの車が捕まえられない恐れがある)
ツアー出発予定時刻の19時が刻々と迫ってくる。相変わらず雪は激しく降っていた。こうなればやけくそで飲むしかないとホテルの近所にあったピザ屋で、ビールをしこたま飲み「絶対晴れる!そして見れる!」などと可能性の低い事をホザキつつ、心のどこかで中止になれば「お金を払わなくて済むのに・・・」などと考えていた。
19時前、待ち合わせ場所のホテルロビーに行くと我てらの他に3人の日本人がいた。どうやらその人たちも急遽行く事にしたと言う。そして雪の中現れたハイエースにはさらに2人の日本人。全部で7人の日本人ツアーになった。(4人以上集まれば1人400クローネになると聞いていたので少し安心)
ドライバー兼ガイドの男は無情にも「レッツ ゴー スノーウォッチング」などとほざいている。
「あんたはいつでもオーロラを見られるから良いが、こっちはこの機会を逃すといつまた来れるのかわからんのだぞ!」
と怒りたい所であったが、グッとこらえて車に乗り込んだ。
(もちろん英語でそんな事言えるわけが無いが・・・)
車が走り出すと、容赦なく降り続く雪にヘッドライトが反射してほとんど前が見えない状態。途中何度もドライバーは車を降り凍りついたワイパーとガラスをプラスチックのヘラでこすっている。
そんな状況で車はかなり遅れてラムフィヨルドに到着したのだが雪は一向にやむ気配はなく、ドライバーがスコップで除雪しながら我てらを観測小屋に招きいれた。
そこでトイレを済まし、レンタルされる防寒具に着替え再び外に出た。そのわずか15分位だったであろうか。まるでどこでもドアを開け別の場所に来たかのように雪がやみ、雲の切れ間から星空が見えるではないか。この嘘のような状況に我てら一行は寒さなど忘れ、新雪降り積もる獣道のような所を転がるように海岸線まで下っていった。
そしてフィヨルドの切り立った山と山の間にたどりつき視界が開けたその時、遠くの空に薄緑色の光が目に入った。
それはあきらかにオーロラである。しかも距離はややあるが、キールナで見たものより肉眼でもはっきり見える強い光を放っていた。
我ては慌てた。キールナでのオーロラ経験上オーロラはすぐに姿を消す。ましては強い光で輝くのなどほんの一瞬にすぎないであろう。さらにいつ雪が降ってもおかしくないこの天候。光の無いラムフィヨルドで、手探りに三脚とカメラをセッティングした我ては慌ててシャッターを数枚切った。
しかし、我がF4sに装着していた16mmフィッシュアイレンズ(魚眼レンズ)では撮影範囲が広すぎる為いらない物や、雲ばかり写ってしまい良い絵にならない。(本当は空一面に広がるオーロラ用にこのレンズを持参したのだが今回の旅行ではその威力は発揮されなかった)そこで、雲の切れ間に出ているオーロラをピンポイントで狙おうとで50mmF1.4の標準レンズに付け替えた。フィルムはフジクローム「プロビア400X」そして前回同様、オーロラ撮影の基本にのっとり、「絞り開放(f1.4)」「ピント無限」で(ここまでがオーロラ撮影の基本)F4sの裏フタに装備したマルチコントローラーで20秒きっちりシャッターを開放したのが今回掲載した写真。
(20秒とは我てが勝手に決めたシャッタースピードである)
あきらかに露出オーバーでオーロラの色がとんでいる。うぅぅぅ。。。
出来上がった写真を見る限り主な失敗原因はいくつかある。
1.オーロラの光が強かった事。
2.強い光のオーロラのみをピンポイントで狙った事。
3.そしてレンズがF1.4と明るかった事。
つまり、もっと遅いシャッタースピードで良かった訳である。
無常にもポジフィルムはそれら複合的な失敗を、そのままの形で記録していた。
言い訳をすれば、事前に日本で仕入れた情報でISO感度800以上が望ましいとなっている書物が多かったが、今回我てが使用したフィルムははISO400のポジフィルムだった訳で、つい弱気になり長めのシャッタースピードを選択してしまった。(実はこの後シャッタースピードを30秒に伸ばして数枚撮っているがそっちはさらに露出オーバーであるのは言うまでもない)そしてオーロラ撮影の最後の基本。「シャッタースピードは色々試す」という重大な事を怠った結果であると深く反省かつ悔やんでいる。(これもマルチコントローラのボタンが小さく、寒い暗闇で手袋をはずし小さなボタンを押して設定するのが面倒くさかったからである)
結局そのオーロラは辛うじて頭上に広がる晴れ間に「おいでおいで」する我てらの願いもむなしく15分程で姿を消してしまった。そしてみるみる雲が広がり先ほどまでと変わらない激しい雪が降り始めた。その後も執念深く3時間程ねばりオーロラの姿を求めたが、オーロラどころか星すら見えない状況のまま、ホテルに引き上げる時間を向かえた。
今回の旅行でしばらくカメラを触っていなかった我てが残せたオーロラの写真は総重量15Kgの機材のわりにはあまりに情けないものだったかもしれない。しかしプロでもない我てが見たことも無いオーロラ相手に奮闘した努力の一部は残せたのではないかと自負している。そしてなによりこの悪天候のなか、まるでモーセの十戒のように雲が割れ、いつ出るともわからぬオーロラがそこに輝いていた事は神のご加護としか思いようがない。
以下、今度オーロラ撮影に挑む機会があった時用にメモとして記す。
(この撮影方法を真似して失敗しても知りません。)
【露出】
・絞り開放(F2.8前後)
・ピント無限
・シャッタースピード(ISO400の場合)5秒-30秒で色々試す。
【機材】
・ネガフィルムの方が確実に写るし、現像時に色補正ができる。
・マニュアルカメラは寒さに強い。
・三脚にカメラを2台付けられるプレートは重宝する。
・雪の上に機材をそのまま置ける防水ケース(ペリカンケース等)は重宝する。
・デジカメに頼らない(一眼レフは不明)
・電池はたくさん持っていく。
・冷えたカメラをいきなり暖かい屋内に入れない為に(結露して故障する)衣類圧縮袋と上記の防水ケースは重宝する。
【防寒対策】
・手先、足先が寒さで痛くなるので、足先に貼るホッカイロ、手袋はこまめにはめる
・いくら防寒対策が万全でも外に出ていられる時間が限られるので屋内から外の様子をこまめに窺う。
【オーロラ】
・いつでるかわからない。
・出てすぐ消える事もある(機材の用意は速やかに)
・動きが速い(同じと思えても何枚も写真を撮る)
・しつこいようだが信じられないくらい早い。
【最重要項目】
・必ず見れると信じる事。(あきらめない)
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